ヒッピータウンに生きる人びと。ジェイムス・オザワによる写真展「The Dreamer」インタビュー。

2017/08/23 - Art, Life Style

いつ、どこで、なにを、どのように撮るのか。写真家にとって、被写体を選ぶということは、自分自身のスタイルや生き方を決めることでもある。たとえ意識していなかったとしても、そこには自分自身がうつりこんでしまうから。

写真家ジェイムス・オザワが今月28日からスタートする写真展「The Dreamer」で発表する作品は、オーストラリアの山奥にあるヒッピータウンで暮らす人びとのポートレートだ。これまで自分を縛っていた常識や見えないルールとはまったくかけ離れた存在に出会ったことで、その「社会から外れかけた変人たち」にどうしようもなく惹かれてしまった。この作品のはじまりは約1年前、2016年の中頃までさかのぼる。

「当時、カメラマン仲間を含めていろんな方と話をして。自分を振り返ってみると、好きなことを仕事にしているにも関わらず、どこかで安定した生活にしがみつきながら『本当にこのままこれを続けていくのか?』っていう謎のもやもやを抱えていて。そこから一歩踏み出すガッツがなかなか持てなかった。それでも直感と衝動に突き動かされて、オーストラリアに行くことにしたんです」。

過去にシドニーの大学に通っていた経験のあるジェイムスさん。自分にとって関わりの深いオーストラリアの地に飛ぶことで、何かを見つけられる気がしたのかもしれない。そして、“本当に撮りたいもの”を探しはじめた。

「オーストラリアに着いたものの、当然ノープランで。まずはいろんなところを回るために大きめのバンを買い、一ヶ月かけて内装を全部取っ払って、ベッドとフィルム保管のための冷蔵庫を入れました。屋根にはそれを動かすためのソーラーパネルを取り付けて、ようやく出発。そこからはとにかく闇雲に車で移動していたんですが、この期間はなかなかしんどかったですね。大口叩いて出てきたにも関わらず、シャッターを切りたくなるものが見当たらず、仲良くなったホームレスのじじいに小銭をだまし取られたこともありました(笑)」。

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期待が大きかったぶん、ほんの少しの落胆とともに始まった旅。そんなロード・トリップを続けているうちに、ふらっと立ち寄った山奥の村で、心が動いた。

「ここの人との約束で名前は明記しないでおきますが、その村はわりと有名なヒッピータウンでした。結論から言うと、僕はこの村に車を停めて、8ヶ月のあいだ居座りつづけ、そこに暮らす人びとの写真を撮ることになりました。彼らは、話が通じないほどいかれた変人ばかり。なのに、僕は不思議と、でも強烈に“仲間がいた”という気持ちになったんです。自分の中にある常識という概念も綺麗にぶっ壊されました。もともと自分にとっての生涯のテーマとして“愛”を写真で表現したいという思いがあったんですが、不意にその機会が訪れたような実感もあったと思います」。

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一般的な常識からは笑えるくらい外れているし、一歩この村を出れば変人と呼ばれるような人びと。でも、ただひたすら生きたいように生きているからこそ、自信に満ちて輝いている。その姿を見て、すぐに写真を撮りたくなった。

「とはいえ、自由な場所だからこそ半ば無法地帯のドラッグタウンでもあるわけで、用意に人にカメラを向けられるようなところではなかったんです。でも僕は自分がここまで強い思いを感じているものを写真に収められなかったら、もう写真は辞めるしかないと思った。だから、8ヶ月かかりましたがこの村に根っこを生やすまで住み続けました。それがこの『The Dreamer』という展示になっています」。

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「タイトルには“夢追い人”と“変人”のふたつの意味を込めています。東京・原宿という場所にあるギャラリーで開催するからこそ、『夢を追え』『変人であれ』と写真を通して伝えたい。そして、それを許容するだけの愛をみんなに持ってほしい。これだけ人が溢れているんだから、そういうやつが増えれば手元の画面を見つめるより前見て歩いたほうが遥かに楽しいでしょ、って」。

いつ、どこで、なにを、どのように撮るのか。今の時代だからこそ、オーストラリアの山奥にあるヒッピータウンで、そこに生きる人びとを、同じ目線になって撮る。これが、ジェイムスさんが示した自分自身の生き方とスタイルだ。周りの目を気にして見えないルールに縛られた日々を、変人だと思われてもいいから、もっと夢があって愛があって自分を偽らずにいられる毎日にしたい。そんなメッセージは言葉だと陳腐に聞こえてしまうかもしれないが、写真には説得力がある。この作品を見て自分が何を感じるのか、確かめてみてほしい。

展示はコダック アラリス ジャパンの後援のもと、すべてアナログプリント(プリント全63点/52点は自家暗室で作製、他11点はプロラボにて作製)。なぜフィルムを使うのか、その理由もきっと目にすればわかるはず。

Information
ジェイムス・オザワ写真展
「The Dreamer -message from a human being-」

会期:8月28日(月)~9月15日(金)
会場:ギャラリーNP原宿

http://www.nationalphoto.co.jp/gallery/ex_170828_j.htm

「社会と常識の中で作られたものは本当の自分じゃないかもしれない。思い切り夢を追いかけて、お金もなくて、変人扱いされて、何が悪い? どうせ人生は短いんだから、人のために何が出来るか考えて個性むき出しのまま生きたほうが自分も周りも楽しいんじゃないかな。あまり心配しなくても、イカれた仲間はたくさんいるよ。競争も効率もデジタルも、もう十分味わったから、みんなでもっとおもしろい世界を創っていこうぜ」

ジェイムス・オザワ:
1987年生まれ。2008~2010年、写真家を目指すためオーストラリアのシドニー大学を中退後、同じく写真家である結城剛太・山家学の二名に師事。2011~2013年、株式会社ミディアム(出版社)の写真部にて専属契約のもと2年間勤務。2013年~、上記の経験を経てフリーランスとして独立後、主に雑紙・広告を中心にファッション・ライフスタイル・料理の多岐にわたり商業撮影を手がける。2016年、ここまで商業写真を主軸にデジタルカメラを用いて撮影を経てきたが、急速に縮小していく銀塩写真から目を背け続けることに写真に携わる者としての矛盾の念を抑えられなくなり、29歳を機にオーストラリアに拠点を移し、商業から離れたところで自身の最大のテーマである“愛”を写真に焼付ける方法を模索し始め今に至る。